講演INDEX

はじめに

 2021年の東京オリンピック・パラリンピックでは、世界のアスリートが日本に集い、たくさんの感動を与えてくれました。ひたむきに努力し、大舞台で成功を勝ち取る姿もあれば、失敗を恐れずチャレンジしながらも記録を残すことができずに潔く去る姿も、大きな感動を生みました。そうした選手たちの姿を見て、自分自身もチャレンジしてみよう、まずは始めてみようと思った次世代を担う方たちがたくさんいたのではないでしょうか。
 人は感動したり、共感することで、前向きになったり、チャレンジしてみようという気持ちになったりします。その輪が広がり、いつしか一人では実現できない大きな動き、社会の潮流を創り出すことがあります。誰も挑戦したことがなかったことにチャレンジしたり、前人未到の偉業を成し遂げたりする方たちの最初の一歩の原動力となるのは、そのような「共感」や「感動」だったりします。
 全く新しい社会の仕組みや事業を実現する創業者、革新的なモノづくりをする工学者や起業家もまた、前人未到の取り組みを行い、これまでの社会になかった新しい価値観を実現しています。それは、アスリートと同じように、多くの子供たちや若手のあこがれです。
 どのような想いで起業、創業したのか?どのような仲間たちと共感し、チャレンジしたのか?どのような努力や失敗を重ねてきたのか?詳しく知りたいと思っても、身近で起業家・創業者・革新者に接する機会はほとんどありません。
 そうした多くの声を受けて、日本工学アカデミーでは、「ネクストイノベーターへ伝える起業・創業の魅力」と題して、公開シンポジウムを企画いたしました。国内はもとより世界的にも著名な8名の起業家、創業者、工学者が集い、学生や若手研究者など655名の参加者との対話を実現することができました。本稿は、その登壇者講演内容(ダイジェスト)とシンポジウム後にいただいた聴講者の声を集めたものです。

 誰も歩んだことのない道。最初の一歩を踏み出すには勇気が必要ですが、その勇気を後押ししてくれる起業家、創業者、工学者たちの豊富な経験や知識、そして、“起業・創業の魅力”を一人でも多くの方に伝えたい。そのような想いで本稿をまとめさせていただきました。
 皆様が進む素晴らしい未来をご自身で創っていく、そのお手伝いができれば幸いです。

日本工学アカデミー若手委員会 委員長
関谷 毅

編集後記

今回、EAJ若手委員会の企画として、スタートアップや工学研究の最前線で活躍する気鋭の起業家・工学者8名を招いてシンポジウムを開催しました。新型コロナ禍のなか、完全オンライン・ライブ配信形式として、二日間で延べ655名の多数にご参加いただいたことは、驚きとともに感謝でいっぱいです。この数からも関心の高さが伺えますが、開催後にお寄せいただいた参加者アンケート回答からも、「トップイノベーターの生の声に心を動かされた」、「最初から大きなことができなくても、まず踏み出すことの大事さを知った」「自分も動いてみたい」、「今からでも挑戦したいし、次世代を一緒に応援したい」といった声が届いています。若手委員会では日頃、「日本の次世代・若手人材が国際的に競争力のある研究等の成果をよりアクティブに創出できるようにすること。そしてそこからの高付加価値化・社会実装化を促進していくには、どのような環境・仕組みを講ずるべきか」を念頭に置いて様々な活動をしています。シンポジウムの各講演は私も身を乗り出して聴きましたが、一人一人の起業家としての原体験や想い、そして参加者へ送ってくださったメッセージは、他では聴くことのできない熱量が詰まっています。このレポートでは、ライブ講演のすべてを表現してお届けするにはなかなか及びませんが、多くの方の目にとまるものを目指しました。皆様からの、「もっと聴きたい、このようなイベントをまた開催してほしい、今後もぜひ参加したい」といった声を大切に、国際社会における日本の将来をよりイノベーティブな環境にしていくべく、皆様と一緒に活動を発展させていきたいと考えています。

日本工学アカデミー(EAJ)若手委員会 副委員長・幹事
永野智己